心を伝えるネット安全教育

〜愛媛の情報教育10周年記念号投稿文〜
当時:Cyber Guardian Angels JAPAN 担当として活動時の記録
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その5

 Nさんの話によると、「もともと仲のよかった3人の友達であったのに、娘がクラス替えのため、一人だけ別のクラスになったこと・・が原因の発端のようである」とのことであった。

 娘の携帯電話には、「死ね」とか「バカ」等の悪戯メールが届くようになり、娘が登校拒否になりかけているというのである。

 相談の内容は概ね理解できた。しかしこのような問題で警察が動くことも難しいであろうし、一度ですべてを解決する手段も無いのが実情である。

 このような場合、我々はまず相談者に一人ではないことを伝える。

 「一緒に解決策を考えましょう」と話しかけて落ちついてもらうのである。

 何かの問題が発生した場合、必ず双方に何らかの原因があるもので、それをきちんと把握して対応しないと、状況は改善できない。

 この問題は娘の問題であったが、それを心配する母親も精神的に弱っているようで、「まずは元気になってもらうこと、信用してもらうこと、それから解決策を探すこと」という手段が適切であると判断し、Nさんに電話を入れることにした。

 「初めまして、日本ガーディアン・エンジェルス理事でサイバー・エンジェルス担当のハンターと言います。」

と名乗ると、最初怪訝な声で話をしていたNさんの声は、安堵の声に変わっていった。

 それからは、問題が発生した経緯の説明を受け、今後相談できる体制を確保するために、私の相談専用携帯電話番号を伝え、連絡が取り合える体制を作っておくことにした。

 娘が持つ携帯電話の悪戯から始まった問題は、やがて現実社会でのいじめや娘が通う塾への悪戯電話、脅迫へとエスカレートし、成長期にある純粋な心の彼女は、「手首の内側をカミソリで切る」という行為に及ぶことになる。

 もちろん、所轄の警察や中学校へも相談するよう指示していたが、簡単に解決する問題ではなかった。

 毎日のように連絡をとり、その日の調子を聞き、勇気づけることしか私達にできることはなかったが、それだけでも相談者には心強かったようで、このような問題へ進展した経緯がよく分かるようになってきた。嫌がらせをしていた相手が誰であるのか予想できても、特定したわけではない。ただ、その原因が、「もともと仲の良かった人間関係が崩れ、やがて連絡手段として使っていた携帯電話の文字が正確に伝わらず、誤解が誤解を生んで、エスカレートして行った」ということだけはよく分かった。

 今の時代、テレビゲーム、オンラインゲーム、チャット、掲示板その他、お互いのコミュニケーションはすべて、文字による伝達となっている。

 それほど遠くない昔、神社でかくれんぼや鬼ごっこをし、川では魚をおいかけ、お互いが話しを交わしてルールを作り、ルール違反も話を交わして解決していたはずだ。

 しかし現在、電車やバスの中、待合室、町のあちこちで携帯電話を操作している人々の姿をよく見るようになったのではないだろうか?学校では、隣の席の友達と携帯電話で話をしている場面もあるかもしれない。
 こうした、言語でないコミュニケーション
を「非言語コミュニケーション」と呼ぶ。

非言語コミュニケーションの場では、同じ文字が読む人によって、千差万別に解されると言われ、非言語コミュニケーションの誤解が様々なトラブルを生んでいる。

 ITに慣れた人であればあるほど、そうした誤解も少ないと言われている。しかし、若者や、IT文化に慣れていない人ほど誤解・トラブルが発生しやすい。

 それを防ぐため、ネット上に自分に変わる絵(アニメ)を作り、自分なりの装飾をして言葉を交わす「アバター」と呼ばれるものも登場している。しかし、それでも誤解は解消しない。

 現代のIT技術は、「人類がこれまで経験をしたことのないスピートで進歩している」と言われている。

 情報技術の発展と供に、私達は人間が本来持つ、コミュニケーションという力を失いつつあるのかもしれない。

 


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