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その6
「今の世の中、なんでも人任せにしていないだろうか? ゴミが落ちていたら役場の仕事、トラブルになったら警察の仕事 学校のことは先生の仕事 嫌なことに自分は関わらない 「見てみないふりをしていたら、自分も見てみないふりをされる。」 昔日本のあちこちに、「そこで悪いことをしたら、怒ってくれた頑固親父がいた。誰にも挨拶をし、人生を教えてくれたお節介なおばさんがいた。」そういう人たちがいなくなってしまって、無責任が当たり前の社会になってしまっている。 「手を見せてみろ」 おもむろに、彼女が切った手首を見てみた。 透き通るような真っ白で小さな腕の内側には、痛々しい小さな傷がたくさん残っていた。 「痛かったろうな」 「傷ついて死んでしまうと楽になれるかもしれない。でも生きて自分の気持ちを伝える こともできるぞ。」 「うん」 彼女は小さくうなずく 「お前どんな気持ちだった?いい気持ちしたか?同じ気持ちに他の人がなったらうれしいか?」 そう私が聞くと、母の顔を少し見た彼女は、 「嫌」 そう答えた。 「そうだろ、だったら今後はお前がその人たちを助けてあげろ」 いろいろな話をしながら、いつの間にかそのような話をしていた。人にはそれぞれ役目がある。お前にもお前の役目がある。俺が今やっているボランティア活動にも役に立つ、 「今日はお前を助けているが、逆になるかもしれない。その時は俺を助けてくれ」 中学2年の女の子は、いつしかその定まらない焦点が私の目をしっかりと見てくれていることに気がついた。 「土佐の桂浜に坂本龍馬が建っている。どんなに風が吹こうとも、どんなに海か荒れようとも彼はそこに建っている。」作家の司馬遼太郎先生が、坂本龍馬に書いた手紙がそこにある。その中に、こんな言葉があった。 「今ここにいる人たちは、50年後にはもういないかもしれない。しかしあなたはずっとここにいる。人々に勇気を与え続けている・・・。」 幕末の時代に彼は遙か未来を見据えていた。信念を持って生きていた。そして今もそこにいる。 私は何かの宗教を勧めているわけでもなければ、思想を押しつけているのでもなく、人間としてしっかり生きてほしいと思っていた。 「そういう生き方もいいもんだな」 そう言って、鞄の中から先日高知県の高等学校で行った講演の途中で自分のお土産として買っていた、坂本龍馬の携帯ストラップを取り出した。 今考えると、栃木県に住む中学2年生の女の子に「坂本龍馬の携帯ストラップ」もおかしな気がする。 「これをあげる。これは坂本龍馬のストラップだけどあげるから、持っていたらいい。俺だと思っていたら元気になる。」 彼女の口元が少しゆるみ、そのストラップを手にとってじっと見た後、母親を見て笑い、 「ハンターにもらった」と言って早速バッグにつけてくれた。 「じゃあ、今から東京へ行こう」 一緒に昼食をとってしばらくした後、私は彼女たちに、これから東京へ出向くように誘ったのである。 「今日は年に一度の総会で、全国から仲間が集まっている。会いに行ってみよう。」 半ば強引であったかもしれないが、私とホークは、Nさん親子と供に東京の総会会場へ向かうことにした。東京へ向かう電車の中で、彼女が持つバッグで揺れている 「龍馬のストラップ」 が妙にうれしく感じた。
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